「そんな裏事情まで、聞いてない。同情させようったって、そうはいかないんだからな」
「そんなんじゃないですよ、ただ、子供らしいこだわりはそういう事情があるんですっていう話です」
でも考えてみれば、ちょっと湿っぽい話だった。
場を白けさせちゃった、と反省する。
あー、ビールを飲みすぎてるんだ。だからちょっと、おしゃべりになっちゃってる。
反省している私の目の前に、ビールが置かれた。
いつの間に取りに行ったのだろう、眞人さんが目の前に座り直す所だった。
眞人さんが私に視線を寄越し、ぎこちなく笑った。
その笑顔は少しだけ寂しそうで、やっぱり気を使わせてしまったのだと感じる。「すみません」と小さく言った。
「え、なにが?」
眞人さんが笑顔を作ってくれる。
「で、その男はそんな事情を知っておいて、それでも酷く捨てる真似をしたって訳だ」
「はあ、そうですねえ。だけど、それを知っているんだから別れずにいてくれ、なんて言えませんよね」
「まあ、なあ……」
私と眞人さんの間には、空のジョッキがむっつほど並んでいる。
あの、もうそろそろ飲むの止めないと、と言おうとする前に、眞人さんに促されてしまう。
そのまま飲んでしまうのは既に酔っているからなのか、私の目を覗き込んでくる眞人さんの目力に抗いがたいからなのか。
「ま、別れて正解だな。情も何もない放り出し方をするんだから、クロの言う通りのクズだ。しばらくは拘ってしまうだろうけど、そんなクズの為に悩むより気持ちを切り替えることに時間を使った方が、有意義だと思う」
「はい、ありがとうございます」
それはとても優しい言い方で、胸に滲みる。
そうなのだ、いつまでもぐずぐず言うより、気持ちを切り替えるほうが余程大事だ。
「眞人さんの言う通りです。これからいろいろ大変なのに、悩んでる暇はないのです。まずは、住むところから見つけなくっちゃ」
「あ、そっか。急に放り出されたって言ってたもんな。住む部屋、見つかってないの?」
「はい、そうなんです。しばらくは友達の部屋を渡り歩く予定です。明日からは不動産屋さん巡りです。引越しなんて考えてもいなかったので、お金が無くって。できるだけ安いところを探さなくっちゃ……」
通帳の残高を思いかえし、はあ、とため息をつく。
現金化できそうなものなんて持っていないし(アクセサリーボックス、返してくれないかな……)、どんな劣悪な環境な物件であっても、安さ優先。涙を飲むしかない。
ああ、明日からが辛い。思わずビールを飲む勢いがついてしまう。
「そんなんじゃないですよ、ただ、子供らしいこだわりはそういう事情があるんですっていう話です」
でも考えてみれば、ちょっと湿っぽい話だった。
場を白けさせちゃった、と反省する。
あー、ビールを飲みすぎてるんだ。だからちょっと、おしゃべりになっちゃってる。
反省している私の目の前に、ビールが置かれた。
いつの間に取りに行ったのだろう、眞人さんが目の前に座り直す所だった。
眞人さんが私に視線を寄越し、ぎこちなく笑った。
その笑顔は少しだけ寂しそうで、やっぱり気を使わせてしまったのだと感じる。「すみません」と小さく言った。
「え、なにが?」
眞人さんが笑顔を作ってくれる。
「で、その男はそんな事情を知っておいて、それでも酷く捨てる真似をしたって訳だ」
「はあ、そうですねえ。だけど、それを知っているんだから別れずにいてくれ、なんて言えませんよね」
「まあ、なあ……」
私と眞人さんの間には、空のジョッキがむっつほど並んでいる。
あの、もうそろそろ飲むの止めないと、と言おうとする前に、眞人さんに促されてしまう。
そのまま飲んでしまうのは既に酔っているからなのか、私の目を覗き込んでくる眞人さんの目力に抗いがたいからなのか。
「ま、別れて正解だな。情も何もない放り出し方をするんだから、クロの言う通りのクズだ。しばらくは拘ってしまうだろうけど、そんなクズの為に悩むより気持ちを切り替えることに時間を使った方が、有意義だと思う」
「はい、ありがとうございます」
それはとても優しい言い方で、胸に滲みる。
そうなのだ、いつまでもぐずぐず言うより、気持ちを切り替えるほうが余程大事だ。
「眞人さんの言う通りです。これからいろいろ大変なのに、悩んでる暇はないのです。まずは、住むところから見つけなくっちゃ」
「あ、そっか。急に放り出されたって言ってたもんな。住む部屋、見つかってないの?」
「はい、そうなんです。しばらくは友達の部屋を渡り歩く予定です。明日からは不動産屋さん巡りです。引越しなんて考えてもいなかったので、お金が無くって。できるだけ安いところを探さなくっちゃ……」
通帳の残高を思いかえし、はあ、とため息をつく。
現金化できそうなものなんて持っていないし(アクセサリーボックス、返してくれないかな……)、どんな劣悪な環境な物件であっても、安さ優先。涙を飲むしかない。
ああ、明日からが辛い。思わずビールを飲む勢いがついてしまう。



