「そういえばー、眞人さんから、私の勘違いを後で解くからと言われていたんですけど、聞かずに帰ったほうがいいですか?」
思い切って、言ってみた。
「勘違いしたままでもいいとクロくんが言うのなら、帰ります」
これは、結構な攻撃力だったらしい。
彼は頬をかっと赤くした。どうやら、素の彼は感情がダダ洩れになりやすいらしい。
「ムカつく! なんだよ、ファンキーブスのくせに! だいたいな、クロって呼ぶな。お前に飼われた覚えはないんだよ!」
「え?」
首を傾げた私に教えてくれたのは眞人さんだった。
「クロって、俺がつけた名前。こいつは、名前を黒田梅之介って言うんだ。呼びやすいようにウメって呼ぼうとしたらババアみたいで嫌だって言うもんだから、クロ」
「はあ」
飼い犬としての呼び名と言うことだろうか。
「眞人はいちいち説明しすぎなんだよ。いいか、クロって呼ぶな」
「じゃあ、梅之介くん」
「ふん、好きにしろ」
それからお皿の片づけをしている間に、表のテーブルには食事が並んだ。
食べたいなー、と横目で見ていたものばかりだったので、ごくんと唾を飲む。
「こんなに、いいんですか?」
「賄用に残してたやつだから、遠慮なくどうぞ」
と、テーブルの上には二人分しかないことに気付く。あれ? と店内を見渡せば、梅之介くんだけ、少し離れた席に座っていた。
「こっち、来ないんですか?」
「ブスの顔見ながら食べると、ご飯が不味くなる」
つん、と顔を背けた梅之介くんは、私に背中を向けて食事を始めた。
「気にしなくっていいよ。はい、お疲れさん」
「あ。いえ、ビールまで頂く訳には」
ジョッキに並々と注がれたビールを差し出されたので断ると、眞人さんが「俺に付き合って」と笑う。
彼の前にはもうひとつ、ジョッキが置かれていた。
「あー、と。じゃあ、すみません。頂きます」
頂いたジョッキを、彼のものと軽くぶつけた。
「んーっ! 美味しい!」
よく冷えた琥珀色の液体はするすると私の喉を通っていった。喉が渇いていたらしい。
「じゃあ、頂きます!」
「どうぞ」
ほこほこと湯気を立てる海老しんじょをお箸で切り分け、口に運ぶ。
「んーっ! 美味しい! ふわふわだぁ!」
上品な味が口いっぱいに広がる。
想像以上の味にほっぺたが緩む。
そしてそれをビールで流し込めば、なんて贅沢なんだろうと思うくらいに幸せな気持ちになる。
「眞人さんの料理って、すごいです。美味しいです」
「いっぱいあるから、遠慮なく食って」
「はい!」
私の目の前に座った眞人さんの勧めるままに、私は存分に飲んで食べた。
「なあ、なんで行くとこがないなんて状況になってるんだ?」
半分ほど食べ進んだところで訊かれた。私が落ち着くのを、眞人さんは待ってくれていたらしい。
「言いたくないなら、無理にとは言わないけど。気になったもんだから」
「あー」
少しだけ躊躇う。だって、あまり口にしたくない情けない話だ。
しかし、眞人さんになら言ってもいいかなと、不思議と思った。こんなにもよくしてくれるからだろうか。
ジョッキの中身を飲んで息をついた私は、「実は」と昨晩の話を始めた。
思い切って、言ってみた。
「勘違いしたままでもいいとクロくんが言うのなら、帰ります」
これは、結構な攻撃力だったらしい。
彼は頬をかっと赤くした。どうやら、素の彼は感情がダダ洩れになりやすいらしい。
「ムカつく! なんだよ、ファンキーブスのくせに! だいたいな、クロって呼ぶな。お前に飼われた覚えはないんだよ!」
「え?」
首を傾げた私に教えてくれたのは眞人さんだった。
「クロって、俺がつけた名前。こいつは、名前を黒田梅之介って言うんだ。呼びやすいようにウメって呼ぼうとしたらババアみたいで嫌だって言うもんだから、クロ」
「はあ」
飼い犬としての呼び名と言うことだろうか。
「眞人はいちいち説明しすぎなんだよ。いいか、クロって呼ぶな」
「じゃあ、梅之介くん」
「ふん、好きにしろ」
それからお皿の片づけをしている間に、表のテーブルには食事が並んだ。
食べたいなー、と横目で見ていたものばかりだったので、ごくんと唾を飲む。
「こんなに、いいんですか?」
「賄用に残してたやつだから、遠慮なくどうぞ」
と、テーブルの上には二人分しかないことに気付く。あれ? と店内を見渡せば、梅之介くんだけ、少し離れた席に座っていた。
「こっち、来ないんですか?」
「ブスの顔見ながら食べると、ご飯が不味くなる」
つん、と顔を背けた梅之介くんは、私に背中を向けて食事を始めた。
「気にしなくっていいよ。はい、お疲れさん」
「あ。いえ、ビールまで頂く訳には」
ジョッキに並々と注がれたビールを差し出されたので断ると、眞人さんが「俺に付き合って」と笑う。
彼の前にはもうひとつ、ジョッキが置かれていた。
「あー、と。じゃあ、すみません。頂きます」
頂いたジョッキを、彼のものと軽くぶつけた。
「んーっ! 美味しい!」
よく冷えた琥珀色の液体はするすると私の喉を通っていった。喉が渇いていたらしい。
「じゃあ、頂きます!」
「どうぞ」
ほこほこと湯気を立てる海老しんじょをお箸で切り分け、口に運ぶ。
「んーっ! 美味しい! ふわふわだぁ!」
上品な味が口いっぱいに広がる。
想像以上の味にほっぺたが緩む。
そしてそれをビールで流し込めば、なんて贅沢なんだろうと思うくらいに幸せな気持ちになる。
「眞人さんの料理って、すごいです。美味しいです」
「いっぱいあるから、遠慮なく食って」
「はい!」
私の目の前に座った眞人さんの勧めるままに、私は存分に飲んで食べた。
「なあ、なんで行くとこがないなんて状況になってるんだ?」
半分ほど食べ進んだところで訊かれた。私が落ち着くのを、眞人さんは待ってくれていたらしい。
「言いたくないなら、無理にとは言わないけど。気になったもんだから」
「あー」
少しだけ躊躇う。だって、あまり口にしたくない情けない話だ。
しかし、眞人さんになら言ってもいいかなと、不思議と思った。こんなにもよくしてくれるからだろうか。
ジョッキの中身を飲んで息をついた私は、「実は」と昨晩の話を始めた。



