『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「ま、待って……梅、之介。もっとゆっくり、歩いて!」


人気のない商店街をずんずんと歩き進む梅之介の足は速くて、追いつくのが精いっぱいだった。
はあはあと呼吸をあげながら言う。

お店から随分離れた、小さな公園でようやく、梅之介は足を止めた。
錆びたブランコに私を無理やり座らせる。
私の前に立った梅之介は、ポケットからハンカチを取り出して、私に押し付けた。


「泣くなよ」


ハンカチを受け取った私の顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。


「好かれなかった、とか、泣きながら言うなよ」

「ご、ごめ……」


ハンカチに顔を埋めて、その場に座り込んだ。唇を噛んで、声を殺す。
好かれなかった。それは、本当のことだ。
だけど、口にするだけでこんなに辛いとは思わなかった。
昨日必死に堪えた涙が溢れて止まらない。


「お前、あいつに昨日なんて言われたんだ」

「……『飼い犬』として、好きだ、って」


歯を食いしばって、震える唇の隙間から言葉を落とす。


「それで、いいの。嫌われて、ないんだもん。だから、もういい、の……」

「馬鹿か」


梅之介は吐き捨てるように言って、苛立ったように地面を蹴り上げた。


「で? お前は眞人のその言葉に納得しちゃったわけだな?」


納得? 納得、するしかないじゃない。こくりと頷いて答えた


「馬鹿か」


もう一度吐き捨てて、梅之介は大きなため息をついた。
私の隣のブランコにどさりと腰かける。


「僕には、訊く権利があると思う。昨日、どうなったのか言ってよ」


頷いた私は、しゃくりあげながら昨日の話をした。


「……飼い犬として傍に置いて、だって? 正気で言ってんのかよ」


梅之介が呆れた声を上げた。


「だって、もう最後だと思ったら……」

「そういうこと思いつくから、お前はあんなクソヒモ男にいいようにされるんだよ。もっと考えて物を言え。都合のいい女になるなよ」


梅之介はそう言って、頭を抱えた。


「眞人も眞人だ。それを認めるなよ……」


涙がようやく止まった私が、ず、と鼻を啜る。
ごしごしとハンカチで涙を拭っている私の横で、梅之介はしばらく考え込んでいた。