「よし。それなら、外のリヤカーを裏庭に持って行くか」
言うが早いか、立ち上がって外に出ようとする。慌ててその背中に声をかけた。
「あ、あの。私、三倉白路といいます。一晩、お世話になります」
「ん? ああ、名前か。俺は眞人。四宮眞人(しのみや・まさと)」
振り返った眞人さんは、「よろしく」と笑った。
それから二人で、リヤカーを店の裏へと運んだ。
「あれ? 足、どうした?」
「あ。ここに来る途中、ちょっと。ヒールも折れちゃって」」
右足をひょこひょこ引くように歩く私に眞人さんが気付く。
えへへ、と笑って恥ずかしさを誤魔化すと「ほんと、散々だな」と彼は笑い、「湿布、あったかな」と呟いた。
焦っていたので来た時には全然店構えを見ていなかったのだけれど、古い日本家屋の一部を店舗に改装しているようだ。
連れて行かれるままに裏門を通って見れば、二階建てのどっしりとした家屋が建っていた。
庭も広くて、暗がりに幾つもの植木があるのが分かる。
「ほえー。おっきな家ですね」
「よく言われるが、幽霊屋敷みたいなもんだぞ。人の使っていない部屋は埃まみれだし、畳が腐ってたりするからな。とりあえず部屋に連れてくから、荷物はあとから取りに来るといい」
雨よけの庇の下にリヤカーを置き、中に入った。
随分古い建物らしい。
歩くたびに廊下がキシキシと鳴る。しかし店と同じく、掃除が行き届いていてすごく綺麗だった。
「あの、ご家族は?」
「飼い犬が一匹だけ。もう寝てる」
「はあ、そうですか」
眞人さんは一階の和室へ案内してくれた。
六畳の部屋は客間として使っているのだろう。中央に一枚板の応接机と座椅子が置かれていた。
さっきの話のように埃まみれではないし、畳もまだ新しい。
部屋の隅にはヒーターが置かれていて、眞人さんはすぐにスイッチを入れてくれる。
「そこの押し入れの中に布団が一組入ってる。廊下の奥がトイレとバスルーム。すぐに使って構わない。俺は向かいの部屋で寝るけど、ここには入らないから安心するといい」
応接机を隣室に片づけながら(こちらはすごく埃っぽかった。なるほど、話は本当らしい)眞人さんがテキパキと教えてくれる。
言うが早いか、立ち上がって外に出ようとする。慌ててその背中に声をかけた。
「あ、あの。私、三倉白路といいます。一晩、お世話になります」
「ん? ああ、名前か。俺は眞人。四宮眞人(しのみや・まさと)」
振り返った眞人さんは、「よろしく」と笑った。
それから二人で、リヤカーを店の裏へと運んだ。
「あれ? 足、どうした?」
「あ。ここに来る途中、ちょっと。ヒールも折れちゃって」」
右足をひょこひょこ引くように歩く私に眞人さんが気付く。
えへへ、と笑って恥ずかしさを誤魔化すと「ほんと、散々だな」と彼は笑い、「湿布、あったかな」と呟いた。
焦っていたので来た時には全然店構えを見ていなかったのだけれど、古い日本家屋の一部を店舗に改装しているようだ。
連れて行かれるままに裏門を通って見れば、二階建てのどっしりとした家屋が建っていた。
庭も広くて、暗がりに幾つもの植木があるのが分かる。
「ほえー。おっきな家ですね」
「よく言われるが、幽霊屋敷みたいなもんだぞ。人の使っていない部屋は埃まみれだし、畳が腐ってたりするからな。とりあえず部屋に連れてくから、荷物はあとから取りに来るといい」
雨よけの庇の下にリヤカーを置き、中に入った。
随分古い建物らしい。
歩くたびに廊下がキシキシと鳴る。しかし店と同じく、掃除が行き届いていてすごく綺麗だった。
「あの、ご家族は?」
「飼い犬が一匹だけ。もう寝てる」
「はあ、そうですか」
眞人さんは一階の和室へ案内してくれた。
六畳の部屋は客間として使っているのだろう。中央に一枚板の応接机と座椅子が置かれていた。
さっきの話のように埃まみれではないし、畳もまだ新しい。
部屋の隅にはヒーターが置かれていて、眞人さんはすぐにスイッチを入れてくれる。
「そこの押し入れの中に布団が一組入ってる。廊下の奥がトイレとバスルーム。すぐに使って構わない。俺は向かいの部屋で寝るけど、ここには入らないから安心するといい」
応接机を隣室に片づけながら(こちらはすごく埃っぽかった。なるほど、話は本当らしい)眞人さんがテキパキと教えてくれる。



