『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「何よ」

「……あなたはもう、眞人さんに与える側じゃないよ。全てを奪った側なんだよ。優しさや温もり、そしてそれを信じる心を、あなたは眞人さんから奪ったの。あなたが今、眞人さんに与えているのは、悲しみと苦しみだけだよ」


私の言葉は、彼女には届かないかもしれない。だけど、私は続けた。


「そんなに眞人さんが欲しいなら、どうして彼をひとりにしたの。かつて、彼の欲しい物を全部あげられたのに、どうしてそれを嘘にしたの」

「たった一度の我儘よ? たったそれだけじゃない」

「たったそれだけ? それは、違うでしょ。たった一度の裏切りが、人の心を殺すんだよ」


小紅さんが、浦部さんに縋って「あの人どうにかしてよ」と言う。浦部さんは黙って首を横に振った。


「ねえ、小紅さん。あなたは本当に眞人さんのことが好きなの? 愛してるの? 本当に眞人さんを想っていたら、絶対やらない間違いをあなたは犯したんだよ?」

「当たり前でしょ⁉ 私は眞人のことを本当に好きなの。あなたこそ私に偉そうにお説教してるけど、眞人のこと好きなの? 大事に思ってるの?」


眞人さんが私を見るのが分かった。
考えたのは、一瞬だった。私ははっきりと、彼女に向かって言った。


「ええ。私は世界中の誰よりも、眞人さんが好きだよ。大好き。あなたなんかより余程、想ってる」


視界の端に、眞人さんがいる。
はっきりと返されると思わなかったのか、小紅さんが目を見開いた。
しかしすぐに、顔をひきつらせながら笑う。


「私より、なんておかしい事言わないで。私は眞人のことを誰よりも」

「誰よりも深く傷つけたんでしょ。そして、こんなとこまでやって来て、彼が塞ごうと努力していた傷口を無理やり開いてる。
負け犬負け犬と言うけど、彼を傷つけたあなただけはその言葉を口にしないで。本当に眞人さんのことを想うのなら、今すぐ帰りなさい」

「嫌よ! 私に命令しないで!」


小紅さんが叫ぶ。ああ、もう会話を続けるもの苦痛だ。


前回のように無理やりにでも外に追い出してしまおうかと思った、その時だった。