「調査結果をみて笑っちゃった。三人で、傷の舐めあいっこをしてたのね」
「どういう意味だよ?」
明らかに小ばかにした口調だった。
梅之助が短く問うけれど、彼女はそれに答えずに私に視線を向けた。
頭のてっぺんから値踏みするようにじっくりと見つめ、くすりと嫌な笑いを零す。
「そんな頭じゃ、彼氏にも捨てられても仕方ないか。一緒に歩くのも恥ずかしいものね」
「何を言うんだ⁉」
眞人さんが声を上げる。
「相変わらず調子のってるね、このブス」
私の横に立つ梅之介が強く彼女を睨みつけるが、彼女はそれに怖気づく様子もない。
逆に、ふんわりと笑ってみせた。
「三倉さんも、黒田さんも、可哀想なことに恋人に手酷くフラれた。そして眞人も、私に捨てられた。そんな三人が、このちっぽけな家で傷をなめ合って生活してたんでしょう? 気持ち悪いったらないわ。敗者の巣窟じゃない」
やだやだ、と大げさに身震いする小紅さん。
私は何も言えずに立ち尽くしていた。私たちの生活は、そんなものじゃない。
そんな彼女に怒鳴ったのは、梅之介だった。
「ふざけんなよ⁉ 何も知らないくせに知った風なこと言うんじゃねえよ!」
「何も知らなくないわ。調べたもの。それに、私たち、お会いしたこともあるわ。ねえ、黒田さん? いつも、御贔屓ありがとうございます」
「え? 知り合いなのか?」
振り返る眞人さんの顔が驚いている。
「あら、知らなかったの、眞人。この人、日舞の黒柳流の家元の御子息よ。お父様の家元とは何度か食事にもいらしたわ」
「な……」
眞人さんが目を見開く。驚いたのは、私も一緒だった。
そうか、育ちがいいとは思っていたけれど、本当にいいところの息子だったのか。
品がいいのも、着物になれていたのも、納得がいく。
私と眞人さんの視線を受けた梅之介は、怒気を孕んだ目で小紅さんを睨みつけていた。
「それ以上余計なこと言うな、クソブス。そのだらしない口を閉じろ」
「クソブスで結構。あなたの元婚約者に比べたら、美人だと自負してるもの」
そう言ったものの、彼女の顔は酷く引き攣っている。多分、悪し様に言われたことなどないのだろう。頬を赤くした彼女は、それでもどうにか笑顔を作ってみせた。
「お父様の女好きは有名ですけれど、なにも御子息の婚約者を愛人になさらなくってもいいのにねえ。だけど、婚約者様の気持ちも分かるわ。だってすごく魅力的な方ですもの。男らしくて行動力があって。ショックで逃げ出して、一年以上眞人に養われているような息子より、父親に魅かれてしまうのは仕方ないのかもしれないわね」
父親に、婚約者を盗られた……。それはなんて残酷な話だろう。
驚いて梅之介を見ると、顔を真っ赤に染めている。血が滲むんじゃないかと思うくらいにぐっと唇を噛んだ梅之助。それを見た小紅さんは嬉しそうに笑った。
「ふふ。ここで眞人に甘えて生活するのはさぞかし楽だったでしょうね? 一生、そうやって眞人に頼って行くつもりかしら。まあ、その可愛らしいお顔で女性に甘えていくのもいいんじゃないかしらね? ああそうだ、この三倉さんに養ってもらったらどう? 彼女、そういうダメな男性がお好きのようだし」
「いい加減にしろ、小紅。お前、人を侮辱しに来たのか」
眞人さんが、テーブルの上の書類を薙ぎ払う。ひらひらと舞う紙切れを、浦部さんが慌てて拾い始めた。
「どういう意味だよ?」
明らかに小ばかにした口調だった。
梅之助が短く問うけれど、彼女はそれに答えずに私に視線を向けた。
頭のてっぺんから値踏みするようにじっくりと見つめ、くすりと嫌な笑いを零す。
「そんな頭じゃ、彼氏にも捨てられても仕方ないか。一緒に歩くのも恥ずかしいものね」
「何を言うんだ⁉」
眞人さんが声を上げる。
「相変わらず調子のってるね、このブス」
私の横に立つ梅之介が強く彼女を睨みつけるが、彼女はそれに怖気づく様子もない。
逆に、ふんわりと笑ってみせた。
「三倉さんも、黒田さんも、可哀想なことに恋人に手酷くフラれた。そして眞人も、私に捨てられた。そんな三人が、このちっぽけな家で傷をなめ合って生活してたんでしょう? 気持ち悪いったらないわ。敗者の巣窟じゃない」
やだやだ、と大げさに身震いする小紅さん。
私は何も言えずに立ち尽くしていた。私たちの生活は、そんなものじゃない。
そんな彼女に怒鳴ったのは、梅之介だった。
「ふざけんなよ⁉ 何も知らないくせに知った風なこと言うんじゃねえよ!」
「何も知らなくないわ。調べたもの。それに、私たち、お会いしたこともあるわ。ねえ、黒田さん? いつも、御贔屓ありがとうございます」
「え? 知り合いなのか?」
振り返る眞人さんの顔が驚いている。
「あら、知らなかったの、眞人。この人、日舞の黒柳流の家元の御子息よ。お父様の家元とは何度か食事にもいらしたわ」
「な……」
眞人さんが目を見開く。驚いたのは、私も一緒だった。
そうか、育ちがいいとは思っていたけれど、本当にいいところの息子だったのか。
品がいいのも、着物になれていたのも、納得がいく。
私と眞人さんの視線を受けた梅之介は、怒気を孕んだ目で小紅さんを睨みつけていた。
「それ以上余計なこと言うな、クソブス。そのだらしない口を閉じろ」
「クソブスで結構。あなたの元婚約者に比べたら、美人だと自負してるもの」
そう言ったものの、彼女の顔は酷く引き攣っている。多分、悪し様に言われたことなどないのだろう。頬を赤くした彼女は、それでもどうにか笑顔を作ってみせた。
「お父様の女好きは有名ですけれど、なにも御子息の婚約者を愛人になさらなくってもいいのにねえ。だけど、婚約者様の気持ちも分かるわ。だってすごく魅力的な方ですもの。男らしくて行動力があって。ショックで逃げ出して、一年以上眞人に養われているような息子より、父親に魅かれてしまうのは仕方ないのかもしれないわね」
父親に、婚約者を盗られた……。それはなんて残酷な話だろう。
驚いて梅之介を見ると、顔を真っ赤に染めている。血が滲むんじゃないかと思うくらいにぐっと唇を噛んだ梅之助。それを見た小紅さんは嬉しそうに笑った。
「ふふ。ここで眞人に甘えて生活するのはさぞかし楽だったでしょうね? 一生、そうやって眞人に頼って行くつもりかしら。まあ、その可愛らしいお顔で女性に甘えていくのもいいんじゃないかしらね? ああそうだ、この三倉さんに養ってもらったらどう? 彼女、そういうダメな男性がお好きのようだし」
「いい加減にしろ、小紅。お前、人を侮辱しに来たのか」
眞人さんが、テーブルの上の書類を薙ぎ払う。ひらひらと舞う紙切れを、浦部さんが慌てて拾い始めた。



