『好き』と鳴くから首輪をちょうだい



来るだろうと恐れていた日は、それから僅か数日後に訪れた。
淡いイエローのワンピースを着た彼女はやはり綺麗で、手入れの行き届いた髪がキラキラしていた。


わざわざ店休日にしてあげたの。今度は、邪魔だからって追い出さないでちょうだい」


裏門から入ってきた彼女は、今度は浦部さんを連れていた。


「力任せに追い出すことも、無理よ」


彼女の後ろに護衛よろしく立つ浦部さんは、苦い顔をした眞人さんに深々と頭を下げた。


「すみません、四宮さん」

「本当に、迷惑なんですよ。あれだけ言っても分かってもらえませんでしたね、浦部さん」

「謝ることないわよ、浦部。眞人だって、いずれはあなたに感謝するわよ」


ふふ、と自信ありげに笑う小紅さんの言葉に、眞人さんの後ろにいた梅之介が「頭悪」と呟く。
それは幸いにも彼女の耳には届かなかったらしい。
玄関の上り框に立つ眞人さんを見上げて、「話があるの。場所を作って」と言った。


「帰れと」

「言われても帰らないわ。私の性格、よく知っているでしょう?」


眞人さんがため息をついた。


「外から店に回ってくれ。開いてる」

「分かった。行きましょ、浦部」


彼女は裾をひらりと舞わせて、門を出て行った。


「いいのかよ、眞人」

「浦部さんがいるし、妙な流れにはならない、と思う。とりあえず話をしてみる。無理だと判断したら、『華蔵』に連絡をするよ」


重たい足取りで店側に向かっていた眞人さんがくるりと振り返る。


「お前たちは」

「ついていく」

「おともします」


すでに背後に控えていた私たちが言うと、眞人さんは小さく笑った。


「それは、頼もしい」


それから私たちは三人そろって、小紅さんの待つ店内へと向かったのだった。


「……あらあら。仲がいいのね」


店の隅のテーブル席に腰かけた小紅さんが、眞人さんの後ろにいる私と梅之介を見て笑った。


「三人で共同生活を送ってるんですってね。楽しそうね」

「俺はもう、話すことはない。お前の用件を早く言え」


小紅さんの正面に座った眞人さんが言う。乱暴な口調に眉根を寄せた小紅さんだったが、気を取り直したように笑顔を作った。


「あなたを連れ戻しにきてあげた、のよ。それでね、私を追いだしたこの人たちが邪魔なのかしら、と思って調べたの」


彼女はトートバッグの中から、大きな封筒を取り出した。中から書類を取りだし、机に置く。