『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

お風呂をあがって、布団を敷いて。しかし私は眠ることなどできなかった。
布団の上に胡坐をかき、ぼんやりとしていた。


「はあ」


何度目のため息だろう。だけど、勝手に溢れてしまう。
いっそお酒でもきゅっと飲んで、酔いに任せて眠ってしまおうか。
そんなことを考えていると、襖がぽすぽすと鳴った。


「はい?」

「僕だけど」


小さな声は、梅之介のものだった。


「どうしたの?」


急いで襖を開けると、梅之介がコンビニの袋を私に押し付けた。


「わ、わあ。なに?」

「これ食えよ! お前の好きな苺のケーキ!」


中には、私が最近がハマっていたコンビニスイーツが三つも入っていた。


「あ、ありがとう。でも、どうしたの、梅之介?」

「いや……お前が、ショック受けてるんじゃないかと思って。それで、だよ」


目線を逸らして、もぐもぐと言う梅之介の顔が赤い。


「あ、ありがとう」


袋をぎゅっと抱きしめて、笑った。
私が凹んでいると思って、買ってきてくれたんだ。
いつもはあんなにブスとか馬鹿だとか言うくせに。なのに梅之介は肝心なところがとっても優しい。


「すごく嬉しい。大事に食べる」

「大袈裟に言うなよ。たまたまコンビニに行ったらあったから!」


デブになれ! と言った梅之介に、もう一度「ありがとう」と言う。


「ありがとう。大丈夫だよ。これくらいでショック受けてたら、飼い犬として失格だもん」


笑いながら言うと、梅之介が大きな目を見開いた。


「なんだそれ。……まあ、元気そうで安心した。じゃあおやすみ」

「うん! おやすみなさい」


梅之介は、私の頭を軽く撫でると、二階に上がって行った。

その背中に「ありがとう」と小さく言う。
さっきも、梅之介に助けられた。
最初はあんなに私の事を毛嫌いしていたのに、こんなに優しくしてくれるなんて。


「私ってホント、恵まれてる」


クリスマスのあの晩には、こんな優しさを与えてもらえる未来があるなんて思ってもみなかった。
自分の幸運に感謝しながら襖を占めた私は、ケーキを大事に食べたのだった。