「どれですか?画材って」



坂田先輩よりも先に準備室へと足を踏み入れる。そのあとから続いて入ってきた先輩が、ドアを閉める音が聞こえた。


俺の問いに反応がないので、不思議に思って後ろを振り向く。先輩はドアの前に立ちふさがるようにして立ち尽くし、下を向いていた。一体、どうしたのだろうか。



「先輩?」


「......ごめん」


「え?どうし_____」



いきなり謝られて、どういうわけかわからず、先輩に1歩近づいたら、進みかけていた自分の足は止まる。どうしたんですか、と、訊こうとして言葉は呑み込まれた。


彼女が、飛び込むように俺の胸に額を密着させたからだ。

まるで抱きしめられてるかのようだ。



「...ごめん、嘘ついた。...画材なんてない」



振り払うこともできず動揺する俺に、静かにそう言って、そして。




「____________好きなの」




そう、はっきりと告った。