歌が運ぶ二人の恋

「蘭ちゃんは、オーディション受けなよ」

「えっ?」

先輩は私の考えていた事を悟ったのか、私にそう言ってきた。

「で、でもやっぱり無理ですよ」

「無理じゃないよ。それに私は、蘭ちゃんの一番のファンになりたいな」

「一番のファンですか?」

「うん。それに私ね、彼の一番のファンだとも思っているの」

「一番のファンって、彼氏さんはどんな人なんですか?」

先輩の彼氏さんって、一体どんな人なんだろ?

色々と考えてみるけど、中々思い浮かばない。

「私の手が届きそうで、手が届かないところにいる。そんな人かな」

先輩は、曇り空に向かって手の平を伸ばす。

「手が届きそうで、手が届かないところに居る人か」

その時、私の脳裏にCOSMOSのライブの様子がよぎった。