歌が運ぶ二人の恋

「うん、ここ私のお兄ちゃんのお店なの、ちょっと今は居ないけど」

「……まじかよ」

最悪だ。

よりにもよってこの女の兄の店だなんて、知りたくなかった。

だけど、この店のケーキは本当に美味しいと思う。

ケーキ一つ一つの飾りも綺麗だし、ケーキに込められてる想いも伝わってくる。

「何してるの?早く選んでよ」

「分かったよ」

俺はいつも頼んでいるケーキに一つずつ指をさしていく。

「これと、これと、これと、これ」

「ちょっと待ってね」

女は、俺が選んだケーキを丁寧に箱に入れると、わざわざ俺の近くまで来て両手で箱を差し出した。

「本当におごりでいいんだな?」

「うん、いいよ」

兄妹って言ってたけど、確かに笑った顔は似ている。