歌が運ぶ二人の恋

「もういい、帰るわ」

そう言い放ち踵を返してドアの方へ向かった時、女に呼び止められた。

「あっ!ちょっと待って」

「なんだよ?」

振り返りると、女が俺に近づいてくる。

「……何だよ」

「あのさ、ケーキ貰ってかない?」

「はっ?」

何だよ急に?

さっきまで喧嘩していた相手にケーキ貰っていかないかって。

「さっきのお詫びしたいんだ」

「お詫び?何のだよ」

「ほら、さっき私達ぶつかったじゃん」

あぁ……。

あのお詫びをしたいってことか。

別にお詫びするようなことじゃないだろ?

「私のおごりにしとくから、好きなの選んでよ」

「おごりって、良いのかよ?店長に怒られても」

「大丈夫大丈夫、お兄ちゃんには言っておくよ」

「はっ……?お兄ちゃん?!」

お兄ちゃんって、まさかこの店って。