歌が運ぶ二人の恋

【蘭】

夢を見た。

小さかった時の夢を。

そこには、今の自分も立っていた。

目の前には、小さな私がいるのに、何で今の私もいるのかな?

「私、何でここに?」

周りは白黒の世界だけど、小さな私には色が付いている。

「お人形遊びしてる」

そういえば、よく一人でお人形遊びしてたっけ?

お兄ちゃんは、帰ってきたら速攻で宿題終わらせて友達の家に遊びに行っていた。

「この時間帯なら確か」

時計の針は、夕方の五時を刺そうとしていた。

「ただいま」

「あっ!お母さん」

小さい私は、遊んでいたお人形を床に置き、玄関にいるお母さん子ところに駆けて行った。

「思い出した、五時頃になるとお母さんが帰って来るから、いつでも出迎えられるように玄関の近くで遊んでたんだ」

懐かしくなり、私もお母さんがいる玄関を覗く。

そこには、病気で倒れる前のお母さんが、元気に笑っていた。

「お母さん……」

でも、私がお母さんのことを見ていても、お母さんは私の存在には気づかない。

「私、お腹すいた」

「はいはい、今から夕飯作るから待っててね」

「うん!」

そして、私は再びお人形遊びに戻る。