歌が運ぶ二人の恋

【正宗】

蘭が事務所に来なくなって三日が経った。

俺は、蘭にどう接していいか分からず、蘭のところには行っていない。

「くそっ、あいつ本気で殴りやがって」

今の俺の頬は、角原に思いっきり殴られ赤くなっている。

それは、数分前に遡る。

「ちょっと正宗!なんで蘭の傍に居てあげないのよ!」

「うるせぇな、今は仕事中だ!」

「仕事より彼女の方が大切でしょ!」

「……」

「ちょっと聞いてんの?!」

角原は、俺の胸ぐらを掴み顔を近づける。

「あいつに言われたんだ。一人にしてくれって」

「それで、はい分かりましたって言って、蘭を一人にしたの?!」

「だったら、お前が傍に居てやればいいだろ」

俺がそういった時、角原の拳が俺の頬に激痛を走らせた。

「いって……」

「私だって居てあげたいよ!でも、蘭は私なんかより正宗に傍にいて欲しいのよ!そんなことも分からないの!!」

と言われて怒られるわ、殴られるわで、本当最悪だ。

「俺だって傍に居たいさ、だけどあいつに拒否られたんじゃ……」

「おーい正宗」

今度は涼介かよ、なんで今日はこんなにも会いたくない奴に会うんだ。

「頬の痛みは取れたかい?」

「取れたんなら、湿布なんて外してる」

「そうだよね」

俺は立ち上がり、湿布を外す。

「戻るぞ、そろそろ練習が始まる」

「正宗は、本当にこれでいいの?」

「はっ?」

「蘭ちゃんを一人にして」

「またその質問かよ……」

俺は、涼介を睨みつける。