歌が運ぶ二人の恋

「実はね、お母さん癌だったの」

「癌……!!」

「気づいた時には遅くてね、末期に入りかけてたの」

「なんで私に嘘なんかついたの?本当のこと言ってくれても……」

「貴方に心配かけさせたくなかったの……。癌なんて言ったら、あなたは自分のやりたいこと捨ててた」

「それはそうだよ、お母さんが癌なら尚更!」

自分の今やっていることをやめて、お母さんのために色々しようとするよ!

「葵さんは、蘭の夢を壊したくなかったんだよ」

「えっ……、なんで正宗が知ってるの?」

「私が話たからよ……」

分かんない。

意味が分かんない!

なんで私には言ってくれなくて、正宗には言うの?!

「私の夢なんてどうでも良かったのに……、なんでよ……」

「私は、蘭のやりたいことを思いっきりやってほしい」

「お母さん……」

「私は、蘭に会えてよかった。貴方の成長していくところを見てあげられなくてごめんね……」

お母さんはそう言うと、上げていた手を降ろして。

「愛してる」

私にそう言い静かに目を閉じた。

「……嫌だ。嫌だよっ!」

私の叫び声が、治療室の中で響き渡った。