歌が運ぶ二人の恋

「先生……、母さんは!?」

お兄ちゃんの質問に、医師は左右に首を振った。

「そうですか……」

「そ、んな……」

体に力が抜けて、その場に座り込む。

「蘭!」

「正宗!」

正宗は、座り込む私の体を優しく抱きしめてくれた。

そのせいなのか、私の中で何かが砕けたような感じがして、私は正宗の腕の中で声を上げて泣いた。

正宗は、何も言わず抱きしめる腕に力を込めた。

「蘭、最後に母さんと話て来い」

「えっ?」

「先生が最後に数分だけ、話ができると言っている」

私は、迷わず頷いく。

「正宗も……、来てほしい」

「分かった」

術衣に着替えた私と正宗は、集中治療室に入った。

「……蘭?」

「お母さん!」

お母さんの声は弱々しかった。

前にあった時はなんともなかったのに、急になんでこんな。

「ごめんね」

お母さんは、私の頬に手を当てる。

その手の上から、私は手を重ねる。

「なんで、お母さんが謝るの?」

「貴方に……、嘘ついてたから」

「えっ?」

嘘ってどういうこと?