歌が運ぶ二人の恋

「そいつは、誰よりもみんなのことを考えていて、笑顔が似合う女の子なんだ」

「そ、そうなんだ」

ますます胸が痛んでくる、こんなことを伝えるために呼んだなら、何でキスなんてしたの?

その子が気になるんじゃないの?

もしかして、キスの実験台として私を使ったの?

「女を好きにならないって言った俺だけど、俺はその子に気持ちを伝えようと思う」

でも、正宗が本気で好きになった女の子なんだよね。

だったら、私は応援しないと駄目だよね。

「正宗の思いは届くと思うよ。だって正宗かっこいいし、意地悪だけど優しいし、その子も正宗のこと好きだと思うよ」

「はっ?」

「だから、私は応援するよ」

正宗がその子の傍に居たいと思ったなら、私は自分の気持ちは言えない。

「お前、なに勘違いしてんだ?」

「はい?だって、正宗は気になる子が出来たんでしょ?その子の気持ちを伝えるにはどうすればいいのかって相談でしょ?」

「はぁ?!お前馬鹿か!」

「……何でそこで私が馬鹿呼ばわりされないといけないの?!」

正宗は、自分の顔を手で覆うとその場に座り込む。

「ここまで鈍感な奴だとは思わなかった。人がせっかくキスまでして意識させようとしたのに……」

何かを言っている正宗だけど、何を言っているのかは聞こえなかった。

「私がいったい何と勘違いしてるっていうのよ!」