歌が運ぶ二人の恋

「ちゃんとお前には伝えなくちゃと思ってる。だけど、もう少しだけ俺について来てくれないか?」

「う、うん。分かったよ」

再び歩きだし、町の中を歩いて正宗に連れてこられたのは、駅や町を見下ろせる高い丘だった。

「すごい、綺麗!」

目の前には、夕日が輝いていた。

「町にこんなところあったんだね」

「前に仕事で来た時に見つけたんだ」

「そうなんだ」

そこで、沈黙感が漂う。

「俺は、前に女は好きにはならないって言ったこと覚えてるか?」

「うん、すごい驚いたよ」

「俺が女を好きにならない理由は、また失うと思ったからだ」

「えっ?」

それから、正宗からお姉さんのことを聞いた。

家族内での出来事や、母親のことを。

女は簡単に壊れるし脆い存在だと、正宗が何でそんなふうに言っていたのか分かったよ。

「でもさ、かなめ先輩のことは好きだったんでしょ?」

「俺は、好きって気持ちがよく分からなかった。だから、かなめに対するこの気持ちは、ずっと好きって気持ちなんだと思ってた。だけど、それは違った」

「えっ?」

だって、正宗は先輩が好きなんじゃ?

「俺さ、最近気になる女の子が出来たんだ」

「えっ……」

胸が痛んだ。

じゃぁ、正宗が私に伝えたいことがあるって、気になる子ができたから?