歌が運ぶ二人の恋

「この人混みじゃいつ迷子になるか分からないからな」

「よ、余計なお世話だよ。私を何だと思ってるの?」

「子ども」

率直に言われた。

ていうことは、私を一人の女として見てないってことだよね?

「でも、子どもだけど強いやつだとは思ってる」

「へ?強いやつ?」

なにそれ?どういうこと?

「たまに正宗が何を考えてるのか、分かんなくなる」

「はぁ?」

ほんとに、何を考えてるのか分かんないよ。

意地悪で生意気で、でも優しくて頼りになる。

「俺のどこが分かんないんだよ?」

「そこは、自分で考えないなんて、正宗は子どもかな?」

「お前、さっきから言いたいこと言いやがって。そういうところ、涼介に似ててむかつく」

「私も、正宗にむかつくよ」

正宗は、私の顔をじっと見ると笑った。

それにつられて私も笑う。

一時間電車に乗った私たちは、電車を降り駅近くのお店へと入った。

「いらっしゃいませ」

お店へと入ると、中には既にたくさんの人たちがいた。

「なんか、思ったより人が多いな」

「それはそうだよ、ケーキ食べ放題だし」

私は、店員さんにチケットを差し出す。

「お待ちしておりました」

「えっ?」

すると、奥の方から店長らしき人が出てきた。

お兄ちゃんの知り合いかな?

「朝柊からは聞いているよ、今日は来てくれてありがと」

「こ、こちらこそ今日はありがとうございます」

私は、慌てて頭を下げる。