歌が運ぶ二人の恋

「ちっ、おい行くぞ」

二人組の男は、掴んでいた手を離すと私の隣を通り過ぎて行った。

「たく、なんだよあいつら」

「そ、そうだよね、私もびっくりしちゃった」

正宗は、相変わらずフードを被っていて、サングラスをかけている。

「まさか、来るなりナンパされてるなんて、お前も大変だったな」

「う、うん。でも正宗が来てくれたから良かった」

「別に放ったらかしにしても良かったけどな。でも、お前が居ないと店の場所知らねぇし」

「はいはい」

相変わらず嫌な口調だけど、これはきっと照れ隠しだよね?

「それじゃぁ、行こっか?」

電車に乗った私たちだったけど、朝ってこともあってやっぱり電車の中は人が多かった。

「く、苦しい」

「これだから、満員電車は嫌なんだよ」

「正宗の車で行けば良かった」

「そうだな、俺も今思った」

「はぁ……」

そして、同時に溜め息をつく。

なんか今日ついてないよ、朝からナンパされ満員電車に遭遇しちゃうなんて。

「おい、蘭」

「えっ?」

私は、正宗に手を掴まれた引っ張られる。

「ま、正宗?!」