歌が運ぶ二人の恋

道路に飛び出した時、俺の目の前にギラギラと光るものが目の前にあった。

気づいた時には遅く、死を覚悟した俺は誰かに突き飛ばされていた。

何が起きたのか分からなくて、パニックに陥っている時、電柱に激突した車の近くに、誰かが倒れているのが見えた。

それが、姉さんだった。

体が震えたし鳥肌も立った。

姉さんの周りには、雨に混じった血が広がっていた。

姉さんを跳ねた車の運転手は、怖くなったのか乗っていた車を捨てて何処かへと走り去った。

俺は、すぐに姉さんの傍に駆け寄った。

何度も姉さんの名前を呼んだけど、最後に姉さんは、優しく微笑むと息を引き取った。

その後、姉さんの葬式が行われた。

姉さんにずっと期待していた母さんは、泣き崩れていた。

母さんは、俺を恨んでいた。

姉さんを殺したのは、俺だとずっと言っていた。

そんなの、十歳の俺でも分かることだった。

姉さんを殺したのは俺だと、自分でもそう言い聞かせていた。

それから俺は、“女"というもの避けるようになった。

でも、それはただ俺が怖がっていたのに過ぎなかった。

女は触れると簡単に壊れる、女は脆い存在だ。

でも、女を避けるようになっても母さんの傍に居たいとは思った。

姉さんが死んでから、母さんはずっと上の空だった。

俺に暴力を振るうこともなくなったし、俺と話すこともなくなった。

そして、俺を見るたびにずっと泣き続けていた。