歌が運ぶ二人の恋

「でも、変質者が出るのは本当のことだからね。最近近くの事務所に所属していた女の子が変な人にストーカーされたとか」

「ま、まじかよ」

「となると、今日出かけていた蘭ちゃんは、どうなんだろうね?」

「えっ?」

いやだって、今日はもう九時回るところだし、流石にこんな時間に外を歩くだなんて。

そこで俺は、ひとつ思い出した。

そうだ。

あいつは、バス停近くの店で誰かと待ち合わせしてたんだよな?

だとしたら、バスで遠くの町まで出かけたとか。

そう考えると、俺の体に鳥肌がたつ。

「わりぃ、俺ももう行くわ」

俺は、自分の荷物と車の鍵を持って楽屋を出た。

「やっぱり、心配なんだね蘭ちゃんこと」

「そうみたいだな」

「阿修羅は良いの?優ちゃんのこと」

「あいつは、別に大丈夫だろ。見た目的に男に見えるし、里音だって楓さんが連れて帰ってるし」

「まぁ、そうだね」

駐車場へと走った俺は、すぐに車に乗り蘭が住むマンションへと向かう。

「とりあえず、まずは家に帰っているか確認したほうがいいな」

車のスピードをあげる。

俺の頭の中に今過るのは、あの日の出来事だった。

「雨か?」

その時、ガラスに一粒の雫が落ち、後から複数の雫が落ちてくる。

「これじゃぁ、本格的に思い出しちまうだろ」

姉さんが死んだあの日のことを。

「やな日だぜ」

蘭が住むマンションにつき、俺はすぐに蘭の部屋の扉の前まで来る。

「はぁ……、はぁ……」

帰っている事を願って、俺はインターホンを鳴らす。