歌が運ぶ二人の恋

【正宗】

「今日は、ここまでにします」

「お疲れ様でした!」

テレビ収録が終わった俺たちは、楽屋へと帰って来た。

「今日もお疲れっす!」

「今日もいい感じだったね」

「そうだな……」

「……」

俺は、何も言わずただ鏡をボーッと見ていた。

「ねぇ、りょっち」

「なに、至流婆?」

「今日のまっちどうしたんすか?練習の時からあんな感じっすけど」

「それは良くある」

「ん?」

「恋の病だよ」

「ええっ!まっちが恋の病っすか?!」

「信じられないな……」

「そうっすよっ!」

後ろの方で三人が何か話しているみたいだけど、その会話すら頭の中に入って来なかった。

俺は、内心一人で反省していたんだ。

「今日一日、蘭のことが頭から離れなかった!」

おかげで今日の収録はグダグダだった。

「疲れた」

今日は、早く帰って寝るか。

そう考え時計を見ると、針は九時を回ろうとしていた。

「そうだ至流婆、最近のニュースみたか?」

「ニュースっすか?たまにしか見ないっす」

「なら、俺から一つ情報な。最近この辺で変質者が出ているそうだ」

「変質者っす?!また物騒っすね。でも、何でそれを俺に?」

俺は、阿修羅の方に振り返り話を聞く。

「だから、大切な人はちゃんと守れってやつだ……」

「てことは」

すると、至流婆はハッとしたようにすぐに私服に着替え始める。

「ど、どうしたんだよ至流婆?」

「俺、今から心愛ちゃんのところ行ってくるっす!今日はm家まで送るっす!」

至流婆はそう言うと荷物をまとめると慌てて楽屋から出ていった。

「お、おいっ!」

変質者なんて、そんなニュース聞いてないぞ。

「阿修羅……、もしかして嘘教えたな?」

「まぁな、これで静かに寝られる」

寝るためだけにあんな嘘ついたのかよ。