歌が運ぶ二人の恋

「こうやって、手と手を合わせてね」

お母さんは、自分の手のひらと私の手のひらをくっつけた。

「これは、何のおまじない?」

「これは、思いが通じ合うおまじない」

「えっ?」

「簡単に言うとね、お互いの気持ちを半分子ずつにするの。そうすれば、怖い気持ちは半分子になって、少しは軽くなるよ」

お母さんの言う通り、怖いって気持ちが少しだけ和らいだ感じがした。

「お母さん、ありがとう!」

お母さんは、やっぱりすごい。

自分にもし子供が出来たら、お母さんみたいな人になりたいと思った。

「私は、いつも蘭のこと応援してるからね」

「うん、ありがとお母さん!」

でも、その時のお母さんの手は、少しだけ冷たかった。

「それじゃぁ、私そろそろ帰るね」

「うん、またね蘭」

お母さんに軽く手を振り、私は病室から出た。

そのあと看護師さんが入れ違いで、お母さんの病室に入って行った。

「葵さん、診察の時間です」

「はい。でも、診察をしたところでもう分かってるんでしょ?」

「でも、娘さんのためにもまだ諦めなくても」

「癌が末期に入りかかってるもの。奇跡が起こらない限り、私が助かる道はないわ。それに、そのうち起き上がれなくなったりして、なにも食べられなくなっちゃう。その前に蘭に会えてよかった」

「葵さん……」

「このことは、蘭には秘密ね」

「はい……」

お母さんが重い病気にかかっていた事に、私はあの日が来るまで知るよしもなかった。