歌が運ぶ二人の恋

「だ、だから何だってんだよ。蘭だって彼氏ぐらい居るんだろ?!」

「まぁそうだね~、蘭ちゃん可愛いから」

その可愛いの言葉を連発するのやめろ、今すぐ殴るぞ。

「蘭ちゃんが居たのは、僕が住んでるマンション近くのバス停前のお店だよ」

「はっ?」

涼介は、それだけ言うと俺の横を通り過ぎる。

「な、なんでそんなこと俺に言うんだよ?!」

「さぁ、何でだろうね?凄く気にしてるみたいだから、素直に教えただけ」

あの野郎。

自分に対して気づかないことが多いくせにか、他人に対してのことははっきり気づきやがる。

「だ、誰が見に行くかっ!」

俺は、涼介の後ろ姿に向かってそう叫ぶ。

「たく、素直じゃないな。僕が気づいてないと思ったら大間違いだよ」

涼介がそんなことを言ってると知らずに、俺の中で焦りの気持ちが出てきた。

「なんでここまで焦らないといけないんだよ。俺には関係のないことだ!」

自分にそう言い聞かせ、俺はレッスンルームへと足を運ぶ。

しかし、やっぱり気になってしまう。

「くそっ……!」

こんなの考えても無駄だ。

今は、全国ツアーに向けて考えないといけないじゃないか。

恋愛とかそんなの考えてる暇なんてない。

俺は、息を深く吐き、頭を左右に振る。

「あいつに彼氏が居たって」

居たところでどうする?

俺は、あいつをどうしたいんだ?

俺の気持ちを伝えたいのか?

でも、伝えたら何かが壊れてしまうという考えが出てくる。

もう、大切な人を失いたくない。

ならいっそのこと、俺の気持ちはあいつには伝えない方がいい。

だけど、蘭を俺だけのものにしたいという気持ちがある少なからずある。

こんなの、俺らしくない。

俺は、あいつを欲しがってるんだ。