【正宗】

「だりぃ」

俺は、事務所近くの道を歩いていた。

「昨日ライブが終わったばかりだってのに、次は全国ツアーに向けてのレッスンか」

今日のニュースは、予想通りMEITOについてだったな。

「そういえば、あいつら学校大丈夫なのか?」

俺たちもデビューしたてのころ学校ではいろいろと大変だったからな。

「まいっか、俺には関係ねぇし」

事務所へと入り、俺は練習着に着替える。

「はよっす、まっち!」

「おはよ、至流婆。朝から元気だな」

「そんなの決まってるっす!」

「なんで?」

「だって、やっと心愛ちゃんと同じ場所で仕事できるっすよ!俺は、この時をずっと待ってたんすから」

「あっそ」

俺は、素っ気なく返しロッカーの扉を閉める。

「そんな言い方ないっすまっち!」

「うるせぇよ、お前の惚気話はもうたくさんだ!」

「仕方ないっすよ!俺は、こんなにも心愛ちゃんの事が好きなんすから!」

「好きとか、意味わかんね」

「まっち?」

俺は、至流婆を置いて先にレッスンルームへと向かう。

そして、歩きながら考える。

「好き」「大切な人」そんな言葉を聞くと、何故かいつも蘭の顔が浮かぶ。

「くそっ」

なんであいつの顔が頭から離れない。

今までこんなことなかったのに。

「どうしたんだよ、俺は」

でも、その原因は俺の中ではもう解決済みだった。

「認めたくねぇな」

俺は、蘭のことが好きなんだろう。

「あいつのどこを好きになったんだよ」

あいつは、かなめの似ているところがある。

前にそう思ったけど、俺はかなめと蘭を重ねすぎていたのかもしれない。

それで、あいつの一番いいところを見つけられなかった。

だけど、昨日のライブでそれが分かった。

俺は、あいつの笑顔に惹かれたんだ。

俺の頭の中に浮かぶのも、あいつの笑顔たった一つだ。

かなめに抱いていた好きの気持ちと、違った好きという気持ち。

こっちの方が、本当の好きっていう気持ちなんだ。