歌が運ぶ二人の恋

その姿を見た俺は、内心ホッとしていた。

「なんだ。いつものあいつかよ」

蘭は、俺の隣に来ると落ち着いた様子で話を始める。

「みなさんこんにちは、星美夜蘭です!」

深々を頭を下げた蘭は、会場をぐるっと見回す。

「今日は、私たちMEITOのデビューの日です!最後まで楽しんで行ってください」

蘭は、最後まで話終わると再び俺に目を向ける。

そして、口ぱくで何かを言った。

「なんだ?」

蘭は、それを二回繰り返す。

『ありがとう』

その言葉が俺の中に響いた。

別にお礼を言われるような事なんて、したわけじゃない。

けど、やっぱり蘭はいつもの蘭のままの方が良いと思う。

何かを深く考えるより、いつも突っ走っていく蘭が、俺は一番見ていて好きだと思う。