歌が運ぶ二人の恋

「どうしよ……」

震えている手に力を入れる。

「蘭どうしたの?」

「り、里音!」

「さっきから、様子が変だけど?」

「ちょ、ちょっと自分を落ち着かせてるの」

「そう?」

落ち着かせるっていうか、全然そんなレベルじゃないんだけど、落ち着かせるどころか、どんどん不安な気持ちが生まれてくる。

「おっ!みんな揃ってるね」

「涼介さん」

ステージ裏に、COSMOSのメンバーが入ってくる。

「お疲れ様です」

「ありがとう、と言ってもこれからが本番だけど、みんな緊張していないみたいだね?」

「緊張って言うより、ワクワクしています!」

ワクワクか、そんな里音を私に分けて欲しいよ。

「どうだ?アイドルはつまらないか?」

「いや、むしろこんなに楽しいなんて、思っていなかった」

「素直になったな」

「どこが?」

優と阿修羅さんがまた睨み合ってる。

「心愛ちゃん!頑張るっす」

「うん、ありがと至流婆君」

あっち二人は、ラブラブだし。

「おい、どうした?」

「えっ?」

気づくと私の目の前に、正宗が胸の前で腕を組んで、私を見下ろしていた。