『蘭、明日早いでしょ?もう寝なさい』

「うん、おやすみお母さん」

『おやすみなさい』

電話を切り、私はベッドに横になる。

「何か生まれた時のこと聞くと、嬉しくなっちゃうなぁ」

近くにあったぬいぐるみを手に取り、明日のことを考える。

「大丈夫だよね、いっぱい練習したんだもん」

あの日から、休憩時間は全部個人練習へと費やした。

そのおかげで、明日は自信を持ってやりきれる気持ちが私の中にある。

「大丈夫、大丈夫」

「大丈夫」というおまじないを呟きながら、寝に入ろうとしたとき、誰かからか電話がかかってきた。

「誰だろ?」

枕の近くに置いておいたスマホを手に取り出る。

「もしもし?」

『あっ、出た』

電話の相手が予想もしていなかった相手だったから、私は驚いて声を上げる。

「ま、正宗?!」

『うるせぇな……』

どうしたんだろういきなり?

「どうしたの?こんな時間に」

時計を見ると、針は十一時を回ろうとしていた。

『いや、ただお前に電話しただけ』

「そ、そうなんだ」

正宗の声を聞くと、自然と私の心臓の鼓動が早くなる。

『……』

「……」

か、会話が続かない。