そして、あっという間に三週間が過ぎた。

デビューライブ前日の夜。

私は電話でお母さんと話していた。

『蘭、いよいよ明日ね』

「うん、失敗しないように頑張るよ」

『蘭なら大丈夫よ』

「ありがとう、お母さん」

体を壊したお母さんは、いつ退院できるか分からないみたい。

「あっ、お母さん。お兄ちゃんの娘はもう見た?」

『うん!見たわよ、可愛かったなぁ』

「だよね、お兄ちゃんには勿体無いぐらいだよ」

『ふふ、そうね』

赤ちゃんの名前は、『椿』ちゃんに決まった。

理由は、お兄ちゃんの奥さんが椿の花が好きだから。

お兄ちゃんの椿ちゃんへのデレデレぶりなんて、恥ずかしくて見られたもんじゃないよ。

「お母さん、私が生まれた時どんな感じだった?」

『え?』

私がそう聞くと、お母さんは黙りこんでしまった。

「お母さん?」

『えっ!な、何でもないわよ。ちょっと蘭が生まれた時のこと、思い出していただけ』

「そうなんだ。それで、私はどんな感じで生まれてきたの?」

『蘭は大きな声で泣いて生まれてきたわよ。看護師さんの腕に抱かれて、私のもとに来た』

「そっか」

どのくらいの大きさだったのかな?