満たされた現状をかみしめながら、結衣のクラスへ行くと、
「ねえ~、結衣ちゃん、夏休みに2人でどっか行こうよ~」
またしても桐谷が結衣に言い寄っていて、周りの注目を集めていた。
結衣――みんなの前でもそう呼ぶ約束だったが、まだ口に出したのは数えるほど。
慣れていなかったし、「みんな」の人数も多すぎて、
「水沢」
結局、そう声をかけた。
「カトセンが、職員室に来てくれって」
用件を伝えると結衣は教室を出て行こうとしたが、すれ違いざま、とても悲しそうな瞳でオレを見た。
その瞬間、胸に鋭い痛みを感じ、オレは自分の過ちに気がついた。
すぐに結衣を追いかけて、「ごめん」と謝りたかったが。
多数の生徒が行き交うこの場所で、そんなことができるくらいなら、「水沢」なんて呼んでいない。
遠ざかる結衣の背中を、ただ見ているしかなかった。
「ねえ~、結衣ちゃん、夏休みに2人でどっか行こうよ~」
またしても桐谷が結衣に言い寄っていて、周りの注目を集めていた。
結衣――みんなの前でもそう呼ぶ約束だったが、まだ口に出したのは数えるほど。
慣れていなかったし、「みんな」の人数も多すぎて、
「水沢」
結局、そう声をかけた。
「カトセンが、職員室に来てくれって」
用件を伝えると結衣は教室を出て行こうとしたが、すれ違いざま、とても悲しそうな瞳でオレを見た。
その瞬間、胸に鋭い痛みを感じ、オレは自分の過ちに気がついた。
すぐに結衣を追いかけて、「ごめん」と謝りたかったが。
多数の生徒が行き交うこの場所で、そんなことができるくらいなら、「水沢」なんて呼んでいない。
遠ざかる結衣の背中を、ただ見ているしかなかった。

