休日の練習後、私は結衣の部屋に遊びに来ていた。


「悠斗にあげる義理チョコ、どうする?」


どうでもいい話をしつつ、


「結衣、吉崎のこと好きでしょ」


不意に私が言うと、


「え、あ、な、え――?」


結衣は今までにないほど慌てふためいた挙句、白状した。


「チャラチャラしてるって怒られそうで、美桜ちゃんに言えなかったんだ」


「練習中にちゃんとしてくれれば、私は別に何も言わないけど。

あ、でも、暗黙のルールがあるから、引退するまではつき合えないよ」


いくら両想いでも――。


だが、この真実に、結衣は未だに気がついていないらしい。


「つき合うどころか、私なんか、吉崎にとっては、同じ部活の顔見知りでしかないんだから」


勝手に勘違いして、落ち込む始末。


「せめて、友達になりたい……」


寂しそうに目を伏せた、結衣。



それは、幼い頃から一緒にいた私に、初めて見せる表情だった。