脚立がぐらついて、結衣の身体が前後に揺れたのだ。


このまま床に倒れてしまったら、しりもちどころではすまない。



突然の事態にまったく動けずにいる私と真紀の間を、吉崎が猛進し――。



間一髪、結衣を抱きとめた。



おそらく、助けることに夢中で無意識に取った行動だったのだろう、


「大丈夫?!」


私たちが駆け寄ると、吉崎はハッとして結衣を下ろした。


「……ありがとう」


弱々しい声の、結衣も動揺を隠せない。


「…………」


吉崎の緊張は限界を超え、結衣と目を合わせることすらできないようだ。


無言で立ち上がると、本来の目的を忘れ、部室を出て行こうとした。