夏休みが終わると、生活は平常どおり。


わかりやすい人たちはわかりやすく。

わかりにくい人はわかりにくく。

桐谷はあからさまに、結衣を想い続けていた。



わかりにくい人――吉崎を観察していて、私は気づいた。


同じ場にいて、結衣と会話を交わす可能性があるような場合、吉崎はいつになく寡黙になって。


近くにいたとしても、それぞれ別のグループでの会話が成立しているような時――結衣と話す可能性が低い場合には、いつもどおりよくしゃべる。


マネージャーに何か頼んだり聞いたりする時、結衣がいちばん近くにいても、他のマネージャーのところへ行く。



要するに、吉崎は、結衣のことが好きなあまり緊張してしまい、結衣と話さない――話せないのだ。


本当は、話したくてしょうがないくせに。