棗side

「皆口玲也を誰も助けない。
 自分は無関係、そう思ってる。
 そして、君は一人で抱え込みすぎ」

そう女が言った。
俺は、自分に言われた気がした。
確かに清龍は、他人の領域に入ってこない。俺の過去にも。
だから、無関係、そう思っている。

女は、玲也に殴られた。
それでも、しっかりと玲也を見つめていた。

「殴りたければ殴ればいい。
 君の心が晴れればそれでいい。」

と言ったんだ。

こいつは、人の心に勝手に入ってくる。だから、苦手だったのかもしれない。

けど、俺は確信した。
この女なら信じられると。

女、否、山咲月、
できるだけ、早く起きろよ!

           end