器用で何でもそつなくこなしてしまう瀬戸くんは

やっぱり入学してきた時から特待生として周囲から一目置かれる存在だった。


勉強もスポーツもできて

おまけに甘い顔立ちと整ったルックスを持っている瀬戸くんは当然注目の的だったし

影で瀬戸くんに恋している女のコたちはたくさんいた。


…もちろん、わたしもその内のひとり。


だけど、わたしなんかがあの瀬戸くんに話しかけられる勇気も、親しくなれるキッカケもあるはずが無くて


七つもクラスが分けられていた当時

クラスが隣同士だったわたしは、教室移動で偶然すれ違った時や体育祭などのイベント時


そして毎年隣のクラスと合同で行われるプールの授業だけが

瀬戸くんと会える唯一の時間だった。


友達を作る時でさえ、いつも相手から話しかけてもらえるのを待つことしか出来ないわたし。


そんなわたしに出来ることと言えば

やっぱりいつも遠くから瀬戸くんの姿を見ている事くらいで…。


だから今年の春、やっと瀬戸くんと同じクラスになれた時は涙が出るくらい嬉しくて
何度も何度もクラス表を確認してしまった。


それくらい、すっごくすっごく嬉しかったんだ。


外見も成績も何もかも平凡並なわたしにとって、瀬戸くんはまるで雲の上のような人。


そんな瀬戸くんと毎日会える。話せる。そして笑ってくれる。


これは全部わたしがずっとずっと夢にみていたこと。


だからこれ以上わたしが望むものなんてない。なに一つとして無いはずなのに。


願いが一つ叶えば叶うほど、どうして人はこうも欲張りになってしまうのかな…。