昨日の天気がまだ尾を引いているのか、外はまだぼんやりと曇り空だった。


でも今朝の天気予報では、夕方には晴れるって言っていたし、水泳は実行されるんだろうな…。


そんな事を考えては、授業中もすっかり上の空でため息をおとす。

…あんまり眠れていないせいかな。何だか頭がボンヤリする。


むしょうに瀬戸くんと話がしたくなったけど、やっぱり話しかけることも出来なくて

複雑な想いを今も抱えたまま、放課後を向かえることになった。



ホームルームを終え、水着に着替えたわたしは、更衣室からドアを開けると、

勇気を出してプールサイドに足を踏み出す。


そこから恐る恐る顔を出してみると、

そこにはわたしよりも一足先に小野くんがベンチに浅く腰をかけて、待っていた。


でもなんて声をかければいいのか分からなくて、

ここから動けないまま…少し離れた場所で立ち往生していると、小野くんがこっちに気づいて言った。


「なんだよ。ビキニじゃねーの?」

「え?あっ…」


わたしを見るなり、豹柄のサーフパンツ姿の小野くんは露骨にイヤそうな顔をした。


小野くんの第一声に、わたしは戸惑いながらも、遠慮がちに自分の水着姿に目をとおす。


…わたしが着てきたのは、学校で指定されているスクール水着。


昨日はビキニをズタズタに引き裂かれてしまっていたから、

やむを得ずこれを着て瀬戸くんの前で泳いだけれど


ビキニならもう一着あるし、それを家から持ってくることだって出来た。

でもだからと言って小野くんの前でそれを着てくるのは、

何だかやっぱりその、気が引けたから……。


「あ、あの…瀬戸くんは…?」


まだ来てないのかな…?


不安になってわたしは、小野くんの近くまで恐る恐る歩いてくると、

キョロキョロと辺りを見回して瀬戸くんの姿を探す。


すると小野くんはベンチに座ったまま、足元の地面を蹴って言った。


「瀬戸ならまだ来てねーよ」

「そっか……」

「つーか、さっさと始めようぜ」

「え?で、でも…」


瀬戸くんがまだ…


そう言いかけようとしたそのとき、男子更衣室からドアが開いた。