男の人は、とてもイケメンだった。
サラサラの黒髪に、二重の瞳。
すらりとした体に、綺麗な青い着物が似合う。
和風って感じ漂う雰囲気に、あたしは一瞬で惹かれた。
「お嬢さん、お名前は?」
「秋桜小町…です……」
「小町さん。可愛い名前ですね」
「…ありがとう、ございます……」
自分の名前が嫌いなあたしは、内心溜息をつきながら頭を下げた。
「小町さん。
少々、お尋ねしたいことがあるのですが」
「何でしょう?」
「三神王政様を…ご存じありませんか?」
三神…王政!?
あの、極悪非道な?
「知っていますけど…」
「どこにいらっしゃいますか?」
「あ、いえ、場所じゃないです。
名前だけ…知っています」
「そうでしたか…。
…そんなに下がらないでいただけますか。
小町さんには何もいたしませんから」
少しずつ後ずさりしたあたしを見た男の人が、笑う。
でもその笑みは、遠矢くんとは違う。
凄く…冷たい笑みをしていた。


