それは、愛のために生きた女性の話。
その人が、たまたま秋桜小町っていう名前なんだって。
秋桜小町さんは、名前とかけ離れた、あんまり美人でも可愛くもない女性。
でも、小町さんの住んでいた村人全員に嫌われていた少年に、唯一優しくしてくれたんだって。
その少年は、誰にも心を開かなかったんだけど、小町さんには心を開いて、一緒に村を守ったんだって。
少年が村人全員に嫌われていたわけ。
それは少年の家に原因があった。
少年の家は、殺しを職業にする、今ではあり得ない仕事。
少年のお父さんやお兄さんに殺された被害者の遺族によって作られた村だったから。
少年自身は、家の仕事に反発し、仕事なんて全くしていなかったけど、その家の生まれってだけで村人から嫌われて。
でも、小町さんだけは優しくしてくれて。
最終的に、少年の家の人は、村人たちを捕まえ殺そうとしていたんだけど、少年と小町さんが体をはって守ったお蔭で、村人たちは殺されずに済んだ。
その上村人たちは少年へ対する態度を変え、幸せになったと言う話があったらしい。
それに感動したお父さんが、あたしに小町と名付けたの。
名字がたまたま小町さんと同じだったし、その話を聞いたのはお姉ちゃんに華恵と名付けた後だったから。
「どんな人でも、優しく接せられる子に」と言う意味らしいけど…。
正直あたし、その意味通りに生きていない。
ハッキリ物を言う性格らしいあたしは、気に入らないことがあるとバンバン後先考えず言っちゃうし。
過去には色々なことも…しちゃったし?
はぁ、何でお父さん小町って名前にしたんだろう。
確かに秋桜小町さんの話は感動的だけど。
それで感動したからって、あたしに名付けるか?普通。
どんな人でも、優しく接せられるように…か。
そんな風に、生きてみたいな…。


