「遠矢くんが今まで味わった苦しみとか知らないで、反対なんてしないで。
あんたたちも、遠矢くんと同じ道を辿れば、遠矢くんが言う気持ちもわかるから」




…しかし、こりゃ言うの大変。

喉が痛いな。

遠矢くん、先ほど普通に話していたのが羨ましい。






「…小町さんの言う通りです」




遠矢くんが話す。





「三神家を潰したくないと言う人たちに言います。
僕や海鳴村の人たちが味わった哀しみを、味わってください。
味わった後、聞いてください。

三神家が、本当に必要な名家なのか」





遠矢くん…。

あたしはギュッと遠矢くんの手を握る。

驚き、振り返った遠矢くんを見て、あたしは笑う。

遠矢くんも、にっこり笑った。





「俺は遠矢の意見に賛成だな」

「兄上…」

「三神家を、誰からも愛される名家にしよう」

「兄上…。
ありがとうございます!」





良かった。

ただ単に、すれ違っていただけなんだ。

1つの遺言書が、2人の仲を壊したんだ。




でも、仲直りは間に合うはず。

だって2人は、

兄弟なのだから……。