砂の鎖

「あず。一人分でいいから」


いつの間にか電話を終えていた拓真は私の真後ろに立っていた。
至近距離で聞こえた声に少し驚いてしまった。

でもそれに気が付かれるのは癪に障る。


「うん。分かった。それより拓真、昨日の夜……」


拓真が焚いたご飯をつめながら、弁当箱が無いと文句を言おうとしたところで、先ほど探していたシンプルなブルーの弁当箱を目の前に突き付けられる。


「あずの分は用意してあるから」

「は?」


拓真が私の弁当箱を手に持ち私の目の前にぶらぶらとさせながらニコリと笑う。


「なにそれ。作らなくていいなら早く言ってよ!無駄になるじゃない」

「え?」

「なに?」


貴重な朝の時間を無駄にした。
作っちゃったのにどうしよう……
夜食べるか……

溜息をつく私に、拓真は目を丸くする。


「それ俺の分じゃないの?」

「自分の分作ってないの?」

「うん」


は? 何考えてるんだこの男。
それなら自分の分も作っておけば良かったじゃない。
一人分も二人分も大して時間は変わらないでしょ?


「ふーん……でも二人分なら丁度いいか。ってか拓真、その弁当箱で足りるの?」

「え?」

「なに?」


なんだか要領を得ない会話になってきた。
拓真がどうするつもりだったのかさっぱり分からない。

でも、弁当が二つ、弁当を食べる人が二人。数は合っている。
それぞれ作ったものを持っていく、で解決の筈だ。