砂の鎖

「あんな馬鹿親子にあの女の何が分かるって言うのよ!?」


髙いヒールを履き、長いネイルチップつけた細い腕で幼い私を抱え、頼る人も無く人から蔑まれる職を全うしていた彼女。


自由奔放で、幼い娘に恋愛相談をするような常識のない母だった。


――ママが好きならいいんじゃない?


幼い私は同年代の彼女の友人であるかのように四畳半の畳敷きの部屋の卓袱台に肩肘を吐きながら、悩ましげな溜息を吐きながらそう言うのだ。


―あず、大好き!


私に肯定されると彼女は何よりも瞳を輝かせキラキラとしたドレスやアクセサリーを身に着けたまま私を抱きしめるのだ。


――あずがいてくれれば私何もいらない!!


そんな彼女に私は少し、鬱陶しそうに眉を顰める。


「あの女を悪く言っていいのは、この世で私だけよ!」


そんな瞬間が、私は何よりも好きだったのだ。


大好きだった。


一人世間の冷たい視線に立ち向かうママは私の憧れで、強さの象徴だった。
家ではだらしないママが身に纏う美しいドレスや宝飾の数々は、美しさの象徴だった。


ママは、私の誇りだった。


私は確かにママを、愛していたのだ。


だからこそ、私に何も言わずに勝手に死んだ彼女を今も許せない。

そして、私の大切な彼女を貶める言葉を無責任に吐く、恵まれた横井とその母親が、許せなかった……