砂の鎖

突然、軽快で少しうっとおしい電子音が響いた。
その音に、私はビクリと肩を揺らした。
少し慌ててからその正体に気が付いて、今度はホッと胸を撫で下ろす。
拓真のスマホの着信音だ。


「拓真。その音変えてよ……」

「この音が一番気が付きやすくない?」


拓真の携帯の着信音は、私の目覚ましと同じ音だからいちいちびくびくしてしまう。

拓真はダイニングテーブルの横で充電器にさしてあったスマホを手に取った。

それから鳴りつづけるスマホの画面を見て、少し眉を顰める。


「朝から職場の人だ……」

「……うるさいからさっさと出なさいよ」

「せっかくの団欒に仕事の電話なんて出たくないよ……」


子供みたいな事を言って私を見る。

私がそれを無視してテレビに目を向ければ拓真も諦めて電話に出た。


「佐々木さん? おはよう。どうした?」


いつもより少し低いその声。
電話の向こうからは甲高い声がする。


「……ああ。そうか……」


拓真をちらりと見た。

仕事モードの拓真を見る機会なんて滅多にない。
こんな拓真でさえ、落ち着いた大人の男性に見える。

そのギャップに少し驚いてしまう。


「ああ。仕事の心配はしないでいいよ。大丈夫か?」


体調不良の電話の様だ。
詳しくは知らないが、こう見えて拓真は職場じゃ部下がいる立場らしい。

この拓真が。

よっぽど人手不足の会社なんだろうか……
それとも、拓真は外に出れば人が変わるんだろうか……

仕事モードの拓真はこちらを見ることはまずない。

だから安心して、私は電話をする拓真の横顔を眺めていた。