砂の鎖

私は手を合わせて、目を瞑るでもなくそこに飾られた写真を睨み付けた。

私とよく似た、つり目がちの大きな瞳を細めたはっきりとした派手な顔立ちの女が、勝気に艶やかに真っ赤な唇の端を吊り上げている。
プロのカメラマンに商売用に撮らせた写真だから、随分と映りがいい。

彼女はこの写真を遺影に使うようにとバカみたいな遺言を残した。彼女らしいと思う。

そんな彼女を、私は嫌いなのだと思う。
こうして遺影の前で手を合わせることが不愉快で堪らない……


「ママ……」


そっと、私はもう答えることのない彼女に呼びかけた。


「……なんで、よりによってあんな男おいていったのよ」

「あず! なんてこと言うんだよ!」


なんだ。もう戻ってきてたのか。
拓真の不平に思わず舌打ちをしてしまった。


「どうせならもっと金持ちのダンディなおじ様とかにしてよ! お客さんで沢山いたでしょ!?」

「あず……」


涙目で私に何かを訴える拓真にそっぽを向いて立ち上がった。


「薫さん。あずが反抗期なんだ。どうしたらいいと思う?」


拓真は返答のある筈のない問いを写真に向かって問いかけていた。
困った様な声色のくせに、どこか楽し気だから余計に腹が立つ。

食卓に向かえばやはり思った通り、炊き立てのご飯とねぎの味噌汁と焼シャケ。
朝から焼き魚が食べられるなんて贅沢。


「いただきます」


仏壇に向かって一人手を合わせている拓真の背中に向かって私が言葉を投げかければ、拓真は振り向いてからニコリと笑った。