砂の鎖

「ただいまー」


そんな事をやっていたら、玄関から拓真の呑気な声が響いてきた。

慌てて私は煙草の火を消そうとするけれど、むせてしまっていた私は迅速な対処ができる筈も無く、開けっ放しにしていた仏間の掃き出し窓から煙草の匂いが部屋に入っていたのだろう。

すぐに状況を察したらしい拓真のバタバタと慌てた足音が大きくなり、ガラッと勢いよく仏間と襖が明けられた。


「あず!! 何やってるんだ!!」

「いや。……あの……」

「未成年だろ! 喫煙なんて……どこで買ってきたんだよこんなもん」


拓真は慌てて私の手から煙草を奪い取ろうとして、私は思わず条件反射でそれをよけてしまった。


「あず!」

「ちがうから! これ、ママの!」

「え?」


少し怖い顔をする拓真に焦ってしまい、思わず口をついた私の言葉に拓真は一瞬怯んで。
でも口にしてから、私は妙に気まずくなった。


「……私が、吸ってたわけじゃないから……」


吸おうとしてみた事は黙ってそっぽを向けば、拓真は私の足元に転がったピンクのポーチとシルバーのオイルライター、百円ライターとセブンスターの箱をみて、ああ、と訳知り顔で微笑んだ。


「危ないから、貸して」


拓真はそう言って私に火が付いた煙草を渡すように言って、これ以上拓真に何かを言われたくなかった私はそれを素直に拓真の方に向けた。

拓真が煙草を私から受け取るとき、そっと、指が触れた。
チリっと指先が煙草の赤い火に触れてしまったのかと思ったけれど、そんな筈はない。

拓真はポーチから片手で器用に携帯灰皿を取り出すと、火を消すこと無く煙草をその上に置く。

それから、私の横に座った。


「セブンスターか。薫さん、いつもこれだったよね」

「変わったこと、無いと思うよ」

「そっか……」


拓真は、すのこの上に転がっていたオイルライターを手に持ってカチリと音を鳴らした。


「火、つかなかった」

「そっか……」



静かに、赤い光と揺れる煙を間に、私たちは並んで。

拓真はジッポを。
私は赤い光を眺めていた。