「ごめん。変な意味じゃないけどさ」
真人はちょっと悪戯っぽく笑って言う。
当然、若い血のつながらない男と二人暮らしの私は、その手の疑いは向けられ続けてる。
それでも、真人にそんな事を言われるなんて心外というべきか、驚きというべきか……
とにかく愉快ではない。
「俺の為にも作ってほしいなっていう、軽い嫉妬?」
それからぐっと、手に力を入れて引き寄せられた。
気が付いたら、真人の顔が目の前にあって、柔らかい感触が唇を掠めるように僅かに触れた……
「離れがたいと思ってるんだけど、今日はちゃんと帰るよ」
驚いて呆然とする私に、真人はクスリと笑ってそう言った。
「じゃあ、又明日」
「う……うん……」
そう言って真人はあっさりと私に背を向けた。
(今のって……)
私は遠ざかる真人の背中を見つめながら脱力して門扉に体重を預ける。
(キス……だよね?)
思わず、自分の唇に触れれば先ほどの感触がよみがえって妙に恥ずかしくなった。
(なんか……温めたお刺身みたい……いや。温めたら刺身じゃないのかも)
そんな、よく分からないことを考えた。
でも今のは間違いなく、艶っぽい噂が絶えず割と荒んだ環境で育ってきた私の、ファーストキス。
