砂の鎖

夕食の匂いがそこかしこからし始める頃、辿り着いた我が家は一件ぽつんと真っ暗だった。
当然、拓真はまだ帰っていない。

私は自転車の荷台から降りて抱えていた真人の鞄を手渡した。


「ありがとう。真人」

「ん」


鞄を私から受け取った真人は、それでも自転車から降りようとしない。


「真人?」


不信に思い声をかけるが、真人は下を向いてしまった。
楽しく話してきたはずなのに、何か面白くない思いをさせてしまったのだろうか。
でも自転車から降りてくれなきゃ片付けられない。

そんな事を考えていたら、真人は私の手をぐっと握った。


「なんとなくさ、この家に帰しがたいなって……」

「は?」


手を握って、私の目を見た真人は予想外に真剣な表情をしていた。

そう言えばいつも、あっさり帰る真人を私はあっさり見送っていた。
でも遠回りなのにここまで送ってくれる真人。
私は彼を家に招き入れるべきだろうか。お茶ぐらい淹れてあげるのが常識的な判断な気がする。
でも……


「真人、あの……」

「この家でさ、亜澄は男の為に肉じゃがを作るのかと思うと……」

「は?」


やっぱりそれが常識的な判断だと考えお茶でも、と言おうとした私を遮っって伝えられた真人の言葉に、少しムッとして私は顔をあげた。