砂の鎖

「俺さ、成績落とすと陸上辞めさせられるんだよね……」


真人が、ポツリと独り言のように零した。
気が付けば、真人は随分ゆっくりと自転車を漕いでいる。


「……なんか、カッコ悪いな。俺」

「何が?」

「親の言いなり、みたいなとこ?」


真人は、まっすぐな人だと思う。


「お父さんもお母さんも、真人のこと心配なんでしょ?」


こつりと真人の背中に頭をぶつけてそう言えば、真人はますます項垂れてしまった。


「……ごめん」


何がごめんなのかは聞かなくても分かるから、私は何も言わない。
私に親がいないことは学校中の誰もが知っている。

真人は、優しい人だとも思う。


「なんか俺、亜澄の前では上手くいかないな……」

「何それ」

「告白した時も相当てんぱってたし……」


その言葉には、私は大いに笑った。

確かにあの時の真人は焦ってたよね。
後ろ向きでも分かるぐらい耳を真っ赤にしてた真人。

……でも私は、あの時真人があんな風に不器用な所を見せてくれなかったら、頷く事はできなかっただろう。


「……真人のこと、カッコ悪いなんて思ってる人いないと思うよ」


そんな彼に安心したんだ。

変わってないな、と……