砂の鎖

「ってか拓真! 寝室に勝手に入るってどういう事よ!?」


思い切り大きな声を出して勢いよく抗議をするけれど、拓真はそんな私に悪びれも無く微笑むばかりだ。


「あずが起きないから悪いんだろ? 昨日起こさなかったら遅刻しそうになって結局怒ったじゃないか」

「もうっ!! 着替えるからとにかくさっさと出てって!」

「はいはい」


拓真は甘ったるい笑顔を崩すことなく立ち上がった。


「朝ごはん出来てるから、着替えたらすぐおいで?」

「分かってるっ!」


不機嫌に怒鳴る私に反抗期かな、と、何故か少し嬉しそうにぼやきながら出て行く拓真が扉を閉めるかしめないか、私はドアに向かってクッションを投げつける。
クッションはオーク色のドアにボスリと鈍い音を立ててあたり落下した。



私は一人になった部屋でおもむろに溜息を吐いてからベッドを抜け出した。

制服に着替える為にクローゼットに足を向ける。

自室のクローゼットのドアなんて見なくてもあけれる。
目を逸らして時計を確認すれば、確かに、余裕があるとは言えないけれど朝の支度にはちょうどいい時間だ。


拓真は、私に甘い。
この甘ったるい朝が、今の私の日常だ。

思わずまたひとつ、ため息を吐いた。
先ほど変な夢を見た所為だろうか。
妙に心臓が逸り居心地が悪く感じられる。


拓真の甘さは、時々私をひどく苛々させる……