砂の鎖

その日の帰り、テスト期間中で部活が無かった真人と私は一緒に帰った。

それだけで、次の日にはものすごい勢いで噂は広まっていたのだから真人の人望はすごいと言うべきか、私は悪目立ちしているというべきか……

多分、どちらもだろう。


そんな風に、ろくにお互いのことも知らずに付き合い始めた私たちの付き合いはすぐに終わるだろうというのが周りの大方の予測だった。

真人も所詮は顔だったのかと落胆する声とか、優等生の彼は不遇な生い立ちの私に同情しているのだろうとか、私が真人の弱みを握っているに違いないとか、私が真人を誘惑して既成事実を作ったのだろうとか。
果ては妊娠中絶説まで出ていた様だ。
噂は尾ひれを付けて大魚となった。

けれど幼い頃から揶揄され続けた私は今更そんな噂を気にして傷付くような可愛らしさはとうになく、麻紀がどこからか聞きつけてきた昼ドラ真っ青な噂話の報告を笑ってを楽しむほどで。

真人は真人で、人気者の優等生は私とは違った意味で人目にさらされる事に慣れていたようで、気にすることは無いと涼しい顔。

周囲の期待を裏切って、意外にも私たちの付き合いは順調で、とても純情なものだった。


「亜澄」


昼休みの屋上で、真人の声を聞いて思い出すのは三週間ほど前。


『……亜澄。付き合ってるんだから、名前でよんでもいいよな?』


意を決したかのようにそう言って、真人が初めて私の手をとったのは、付き合い始めてから一週間が過ぎてからだった。


『ちょっと……危ないでしょ! 真人!』


自転車を引いていた私は片手をとられバランスを崩し、二人で転びそうになり大笑いをした。
その時、初めて私も『真人』と呼んだ。

笑ってはいたけどソワソワとくすぐったくて。
真人ってこんなカッコ悪い人だっただろうかとも思い、けれどそれが妙に、心地よかった。